ひとりごと

煙草に関するあれこれ パイプフィクション

パイプを買うということ、あるいは、パイプのコレクションについて

「パイプはつい増えてしまう」と言われているが、自分のパイプ所有数はかなり少ない。たくさん喫う時は、連投している。

 

たくさん持っていたが、売ってしまった。

 

今は、もう1軍パイプ以外所有していない。長年かけて集めたお気に入りのパイプだけ所有し、しかも全て使うというのは、かなり精神衛生に良い。

使うパイプのみ所有し、使わないパイプは持たない。

 

数十本、数百本と不使用のパイプがあるのは心苦しい。自分の場合だと、もう何年も使わないパイプは、「自分にとっては3軍だが、他の誰かにとっては1軍だったりする」と思って、売り払う。

 

もちろん、ブログ等でパイプを広める活動をしてくださっている先人の方々がコレクションすることは、かなりためになっているので感謝しています。ブログ活動をしてくださっている方々、ネット上にパイプ画像をアップして見せてくれている方々がパイプをたくさん所有したり、コレクションしていたりするのは良い事だし、その恩恵をたくさんの人が受けている。コレクションしている方達がネットに公開してくれたおかげで、私もパイプを始められたのだし。更に、パイプの価値がちゃんとわかっていて、大切にメンテナンスしながら使ってくれる本当に煙草好きな愛煙家の元にたくさんのパイプがあることもいいので、パイプ収集している方への批判の意図はまったくありません。

この記事は、昔、パイプをはじめたばかりで、「ビンテージのダンヒルを買わなきゃ・・・10万以上はいる!!とりあえず7本は買わなきゃ」、と慌てふためていたパイプ初心者の若人の事を思い出しながら書いている。彼には言ってあげたかった。そんなもんいきなり無理して買わんでいいよ、と。

 

実際、使い手とパイプには、相性があるので、合わないならさっさと売ってしまって、自分に合うパイプと出会った方が良い。また、パイプ収集などせず、そこら辺で売っているパイプですませるのもいいと思う。

まあ、自分も何年もかけて1軍パイプを選別して、自分の嗜好を突き詰めた上で、数少ない本数しか持たないと決めたので、何とも言えないが。

 

 

基本的には、高値のパイプはそれなりの物としての出来の良さがある。が、高値のパイプより、100ドルのパイプの方が美味い場合だってある。また、パイプは他人の意見も参考にしつつ、あくまで自分でその良さを判断した方が良い。

 

自分は、パイプは、実用品と思っていて、コレクション目的で購入する事はない。

 

パイプをコレクションする事自体には意義がある。価値の分かる者が、所有・保管し、煙草を引退する時に、次の者にバトンを渡す。

個人的には、ものすごいビンテージパイプなんて、パイプ作家とか、物作りをしている人が学ぶためにあるのであって、自分がコレクションのために持たなくてもいいかなと思ってしまう。もちろん、別にパイプ作家でもない人でも、大事にコレクションして、きちんと保管できる人なら誰だっていいだろうけど。

一般素人が、貴重なパイプを持っていたら、本当にそれを必要とする作家志望者等が、とても困ってしまう。いや、一般スモーカーでも、もちろん、その道具を本当に愛して、適切に保管するか、使ってあげるなら、ビンテージだろうが貴重なパイプだろうが持っていていいだろうと思う。もちろん、それらのビンテージパイプは、たまたま今生きている自分のところにいてくれるだけであって、パイプを引退する時には、きちんとパイプの価値が分かり、適切に保管、あるいはレストアする技術を持った者を探して、引き継いで貰わないといけない

あまりに貴重過ぎるビンテージパイプを手に入れて所有欲を満たしたからといって、その次の人を探す苦労もあるのだ。

 

ビンテージパイプも、価値のわかる者がいなければ、所有者の死後、家族に二束三文で売られてしまう。パイプ引退時に、価値のわからない人に捨てられたり、そこら辺に売られたりする恐れがあるなら、さっさと、若手のパイプ作家にでも譲って、勉強してもらって、いいパイプを拵えて貰ったほうが、世の中健全だ。

 

 自分にピッタリなパイプが、他人の眼から見れば、何てことないパイプだったりする。自分にとって何の興味も湧かないパイプが、他人の眼から見れば、羨望の対象だったりする。

 結局は、その人の喫煙スタイルが、パイプを選択させる。(1日1ボウルか、1日10ボウルか、週に1回しか喫わないのか、重たい煙草が好きか、軽い煙草が好きなのか、バージニアか好きか、着香が好きか、ラタキアが好きか、作業しながら喫うのか、ゆっくりパイプだけに集中するのか、手を添えっぱなしか、口に咥えて喫うのか)

 

1日1ボウルしか喫わない人が好むパイプと、1日10ボウルも喫う人とでは、最終的に選択するパイプが違ってくる。だから、パイプの評価は、真逆になったりもする。

 

「まあ、貴重だし、買えるから、とりあえず買っとくか」みたいな買い方をしていると、いざ自分が、喉から手が飛び出るほど、激しく欲するパイプに出会った時に、銀行口座を確認している間に、他のパイプコレクターが「とりあえず安いし、いっときました」とか言って、先を越されるはめになってしまう。本命以外は手を出さない。

 

あまりにも貴重すぎるビンテージパイプは本当に自分が買うにふさわしいのか?引き継いでくれる人はいるのか?そう問いながら買い物することは大事なことだ。だから、私は自分の手に余るあまりにも貴重過ぎるビンテージパイプは購入しない。使えるビンテージパイプしか買わないようにしている。

 

(もちろん、こういう考え方は、私のようなライトユーザー向けの考え方で、将来的に店を構えるような才を持った方や、外国までパイプ買いに行くような人は、こんな平凡な意見はまったく無視してパイプを数百本買いまくっているに決まっている。そういう人でなければ、お店は出来ないから。ある煙草屋さんは、「仕事でパイプ買いまくれるからサイコー」と言っている・・・・かもしれない。)

 

私自身は、もうたくさんのパイプを売り払ってしまって、身軽になって良かったと思っている。人生も終盤にさしかかるのはまだ先の事だが、もし、自分もパイプを引退する日が来るとして、自分のまわりに大量のパイプがあったとしたら、どうすればいいだろう?売り払うのも大変な労力だ。ふつうに古道具屋に売ったら、二束三文で買い叩かれるに決まっているから、ネットでコツコツ売ることになる。せっかく海外から買い集めたものを、また海外に一斉に売り払うのも何だか・・・。使い切れないくらいのパイプに埋もれて、残された家族が、テキトーな値段で売り払うのも辛い。

 

ビンテージパイプは、自分が使った後、パイプから引退する時期に、価値のわかる者に譲らねばならないから、ビンテージパイプというものは一時の間、誰かのもとに仮住まいしているだけなのだ