中古屋の駐車場。
人通りの少ないところにベンチがあって、灰皿がおいてあり、おじさんが煙草を喫っていた。
田舎だから、喫煙所も多い。
自分ひとりしか通っている者はおらず、自分は、おじさんのシガレットから立ち昇る煙に無意識に吸い寄せられて、煙草の煙を無自覚のうちに楽しんでいた。
「ああ、いい香りだ」と思った刹那、おじさんは、すっと煙が私にあたらないようにひっこめて、顔を下げた。
ああ。なんてことを・・・
私も喫煙者だから、煙なんて全然気にしないのに。
おじさんよ、もっと堂々と煙草を喫ってくれ。
こんな田舎の人通りの少ないところで、せっかく煙草を喫っているのだから。
野外の空気の良いところで、空の雲でも眺めながら煙草を喫うせっかくのチャンスなのだから・・・
と心の中で思った。
通り過ぎたあと、ふと振り返ると、そのちょっとトボケ顔のおじさんは、楽しそうに口から吐いた煙で輪っかを作っていた。